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在庫管理をエクセルから卒業する前にやること|卸の倉庫で先に整える5つ

文:山田 魁(AI顧問)

エクセルを捨てる前に、「品目マスタ・単位・ロケーション」を整える

  • エクセルの在庫管理が苦しくなる原因の多くは、エクセルそのものではなく、品目の呼び名・単位(ケース/バラ)・置き場所の決まりがそろっていないことです。この状態でWMS(倉庫管理システム)や在庫システムに移っても、同じ混乱がシステムの中に引っ越すだけです。
  • 卸の場合、同時編集ができない、ケースとバラが混ざる、誰がいつ数字を変えたか残らない、担当者しか直せない、の4つが「卒業」を考える合図です。ただし、合図が出ていても、先にやるべきは表の型を整えることです。
  • 表の型が整えば、エクセルのままでも生成AIでABC分析や滞留在庫の洗い出しができ、関数やマクロもAIに書かせられます。そのうえでシステムに移れば、移行は短く、失敗も少なくなります。

※本記事は2026年10月30日時点の公開情報をもとにしています。Excelの機能や補助金の内容は変わることがあります。

こんにちは。AI顧問の山田魁です。

「在庫はエクセルで管理しているが、そろそろ限界だと思う。システムを入れるべきか」。地方の卸売業の社長や、倉庫の責任者の方から、よくこうした相談をいただきます。

現場を見せていただくと、多くの場合、問題はエクセルではありません。同じ商品が3つの名前で登録されていたり、ある行はケース、ある行はバラで数えていたり、置き場所が「奥の棚」としか書かれていなかったりします。これはシステムを入れても解決しません。

この記事では、在庫管理をエクセルから「卒業」する前に何をすべきかを、卸の倉庫の目線で整理します。後半では、エクセルのまま生成AIで分析する方法も紹介します。

在庫管理とエクセル管理の仕組み

在庫管理とは「何が・どこに・いくつ・どんな状態で」あるかを正しく保つこと

在庫管理は、在庫の数を数えることだけではありません。卸の倉庫で押さえるべきは、次の4つです。

観点 内容 卸での例
何が 品目を一意に特定する 同じティッシュでも、5箱パックと業務用は別品目
どこに 置き場所(ロケーション) A-03-2(A列・3番棚・2段目)
いくつ 数量と単位 2ケース+7個(入数24なら55個)
どんな状態で 良品・不良・引当済・保留など 官公庁向けに確保済みの分は、他に出せない

この4つがそろって初めて、「受注した商品を、すぐに、正しく出せる」状態になります。欠品と過剰在庫を減らす話(発注点や需要予測)も、この土台の上に乗ります。

押さえておきたい用語

  • 品目マスタ:商品の「台帳の元」です。品目コード、品名、JANコード、入数、単位、仕入先などを1品目1行でまとめた表です。
  • 入数(いりすう):1ケースに入っている個数です。「24入」なら1ケース=24個です。
  • ケース/バラ:箱単位で扱うのがケース、箱を開けて個数で扱うのがバラです。卸では両方が同じ倉庫に混在します。
  • ロケーション:棚や区画につけた住所です。「棚番」とも呼びます。
  • 受払(うけはらい):在庫の受け入れ(入庫)と払い出し(出庫)の記録です。受払を積み上げると、現在の在庫数になります。
  • WMS:Warehouse Management System(倉庫管理システム)の略です。ロケーション単位の在庫、入出庫、ピッキング指示、棚卸などを管理します。

エクセルの在庫表には「2つの型」がある

エクセルの在庫表は、大きく分けて次の2つの型があります。どちらで作っているかで、できることが大きく変わります。

型 作り方 よい点 弱い点
台帳型 1品目1行で、現在庫の数字を上書きしていく 作るのが簡単。見やすい なぜその数字になったか分からない。過去に戻れない
受払型 入庫・出庫を1取引1行で積み上げ、品目ごとに集計する 履歴が残る。分析に使える。システムに移しやすい 行数が増える。集計の関数が必要

現場でよく見るのは台帳型です。最初は台帳型で十分ですが、品目数や担当者が増えると、台帳型ではすぐに限界が来ます。後で説明する「卒業前にやること」の中心は、この台帳型を受払型に変えることです。

台帳型は1品目1行で現在庫の数字を上書きするため理由が分からない。受払型は入庫・出庫・移動・棚卸調整を1取引1行で記録し、集計して現在庫を出すため履歴が残る
図1 台帳型は数字を上書きし、受払型は取引を積み上げて集計する

エクセルの同時編集について

「複数人で同時に在庫表を触れない」という悩みもよく聞きます。Microsoftの公式サポートによると、Excelで複数人が同時に編集する「共同編集」を使うには、ブックをOneDrive、OneDrive for Business、SharePoint Onlineのいずれかに保存し、Microsoft 365の対応版のExcelなどで開く必要があります。社内のファイルサーバーに置いたブックでは、この共同編集は使えません(Microsoft サポート:共同編集)。

昔からある「共有ブック」という機能は、Microsoft自身が「多くの制限があるため、共同編集に置き換えられた」「古い共有方法」と説明しています(Microsoft サポート:共有ブック機能について)。共有ブックで在庫表を回している場合は、まずここを見直す必要があります。

卸のエクセル在庫表が限界になる理由と、卒業前にやる5つのこと

卸の在庫表が苦しくなる4つの理由

1. 同時編集ができず、入力待ちが生まれる

FAXで届いた注文を事務所で入力し、同じ時間に倉庫では入荷を入力する。卸では当たり前の光景です。ファイルサーバー上の在庫表では「読み取り専用で開きました」となり、誰かが閉じるまで待つか、メモに書いて後でまとめて入力することになります。この「後でまとめて」の間に、在庫の数字と実物がずれていきます。

2. ケースとバラが混ざる

「在庫10」と書いてあっても、それが10ケースなのか10個なのか、表を見ただけでは分からない。卸の在庫表で一番多い事故の原因です。入数が変わった(24入→20入)のに、表の数字はそのまま、ということも起きます。

地場の小売にはケースで、官公庁や法人にはバラで出す、という卸では、同じ品目でもケースとバラの出荷が混在します。単位の決まりが無いと、毎回「これはどっちだっけ」と確認する手間が発生します。

3. 履歴が残らず、差異の原因が追えない

台帳型の在庫表は、数字を上書きします。棚卸で数が合わないとき、「いつ、誰が、なぜ数字を変えたか」がたどれません。保存場所によってはファイルの版の履歴は残りますが、それは「受け払いの記録」ではありません。原因が分からないまま数字だけを合わせることが繰り返されます。

4. 作った人しか直せない(属人化)

長年使っている在庫表には、作った人しか分からない関数やマクロ、隠しシート、色分けのルールが積み重なっています。その人が休むと、誰も直せない。後継者に引き継げない。同族経営の卸で、ベテラン社員の退職が近づいてから慌てるケースは少なくありません。

物流子会社・季節品があると、さらに複雑になる

物流子会社に倉庫を任せている場合、本社の販売管理の在庫と、子会社が持つエクセルの在庫が別々に存在することがあります。どちらが正しいのか、月末に突き合わせるだけで丸一日かかる、という話も聞きます。

また、年末年始の贈答品、夏季の飲料、年度末の官公庁向け事務用品のように、季節で品目と量が大きく動く卸では、繁忙期だけ在庫表の行が急に増え、運用が崩れやすくなります。

賞味期限・ロットのある品目は、期限ごとに行を分けて持つ

食品、飲料、洗剤や薬品類など、賞味期限や製造ロットのある品目を扱う卸では、「品目×ロケーション」の在庫数だけでは足りません。同じ棚に期限の違う商品が混ざっていると、古いものが奥に残り、気づいたときには出荷できない期限になっている、ということが起きます。

エクセルで回す場合は、次のように持ちます。

  • 受払シートに「ロット番号」「賞味期限」の列を足し、入庫のたびに書く。
  • 現在庫は「品目×ロケーション×賞味期限」で集計する。同じ品目でも、期限が違えば別の行になる。
  • 出庫のときに、どの期限の在庫から出したかも記録する。期限の近いものから出す(先入れ先出し)ルールを、表の上でも確かめられるようにする。
  • 月に一度、「期限まで○日を切った在庫」をフィルタで一覧にし、営業と販売の段取りを相談する。

出庫したロットが記録してあれば、メーカーから回収の連絡が来たときに、どの得意先に出したかをたどれます。得意先と「残りの期限が何日以上のものを納める」という取り決めがある場合は、その日数も品目マスタか得意先の一覧に書いておくと、出荷の判断が担当者任せになりません。

期限・ロットのある品目が多く、行数が手に負えなくなってきたら、それはシステム化を考える合図の一つです。後で出てくるシステム選びの表でも「ロット・期限」を確認項目に入れています。

卒業を考える判断基準

次の表で、当てはまる数を数えてみてください。目安として、3つ以上当てはまるなら、システム化を具体的に検討する段階です。ただし、どれも「すぐに乗り換える」理由ではなく、「準備を始める」理由です。

チェック項目 当てはまる状態
同時に入力したい人数 3人以上が同じ在庫表を同じ時間帯に触る
品目数 数千品目を超え、探す・フィルタするのに時間がかかる
単位 ケースとバラの両方で出荷する品目が多い
ロケーション 同じ品目が複数の場所に分かれて置かれている
差異 棚卸のたびに差異が出て、原因が分からない
拠点 本社と倉庫(物流子会社)で別々の在庫表がある
属人化 在庫表を直せる人が1人しかいない
連携 受注・販売管理と在庫の数字を手で転記している

卒業前にやる5つのこと

ここからが本題です。システムを入れるかどうかに関わらず、次の5つは先にやっておくべきことです。エクセルのままでもできますし、やっておけばエクセルのままでもかなり楽になります。

卒業前にやる5つのこと(品目マスタを1枚にまとめる、在庫はバラで持つ、ロケーションを決める、受払型に変える、棚卸で差異の理由を残す)を済ませ、エクセルで1〜2か月受払型を運用してからシステムへ移行する流れ
図2 卒業前にやる5つのことと、システム移行までの順番

1. 品目マスタを1枚にまとめる

まず、品目マスタのシートを1枚作り、在庫表・発注表・出荷表がすべてそこを参照する形にします。最低限そろえたい列は次のとおりです。

列 例 注意点
品目コード 100235 1品目1コード。使い回さない
品名 ペーパータオル 中判 200枚 表記ゆれを無くす(全角・半角、略称)
JANコード (13桁) ケース用とバラ用で別の場合は両方持つ
基準単位 個 在庫を数える単位を1つに決める
入数 40 1ケースあたりの基準単位の数
仕入先 仕入先コード 名前ではなくコードで持つ
区分 定番/季節/取り寄せ/廃番予定 後の分析で使う
期限管理 有/無 有の品目は受払でロット・賞味期限を書く
状態 有効/廃番 廃番は消さずに印をつける

同じ商品が別の名前で複数行ある「重複」を見つけて1つにまとめる作業が、ここで一番時間のかかるところです。後半で紹介する生成AIのプロンプトが役に立ちます。

2. 在庫は「バラ(基準単位)」で持ち、ケースは表示で換算する

在庫の数字は、すべて基準単位(多くはバラ=個)で持ちます。ケースで見たいときは「在庫数 ÷ 入数」で計算して表示するだけにします。こうすれば、入数が変わってもマスタを1か所直すだけで済みます。

入力するときにケースで入れたい現場もあります。その場合は「ケース数」「バラ数」の2つの入力欄を作り、在庫数は「ケース数×入数+バラ数」で自動計算する形にします。人が掛け算をしないことが大事です。

入数24のケースが2つとバラ7個で在庫数55個。在庫数=ケース数×入数+バラ数で自動計算し、ケース表示は在庫数÷入数で出す
図3 ケースとバラは「バラの数」にそろえて持つ(入数24の例)

3. ロケーション(棚番)を決めて、在庫を場所ごとに持つ

「通路-棚-段」のように、誰が見ても同じ場所にたどり着ける番号をつけます。そのうえで、在庫は「品目×ロケーション」の単位で持ちます。同じ品目がメインの棚と上段のストックに分かれていても、それぞれの数が分かるようになります。

ロケーションが決まると、ピッキング(出荷する商品を棚から集める作業)の順番も決めやすくなります。ロケーションが決まっていないと、新人さんが商品を探す時間も減りません。

4. 在庫表を「受払型」に変える

現在庫を上書きするのをやめ、入庫・出庫・移動・調整を「1取引1行」で記録するシートを作ります。列は、日付、品目コード、ロケーション、区分(入庫/出庫/移動/棚卸調整)、数量(基準単位)、伝票番号、入力者、理由、くらいで十分です。

現在庫は、このシートから品目・ロケーションごとに集計して出します(SUMIFS関数やピボットテーブルを使います)。履歴が残るので、差異の原因が追えるようになります。この受払シートは、そのままシステムへの移行データにもなります。

5. 棚卸で実在庫と合わせ、差異の理由を残す

型を整えたら、一度棚卸をして、表の数字を実物に合わせます。このとき、差異を「調整」で消すだけでなく、理由(入力漏れ、単位の間違い、破損、置き場所違い など)を必ず書きます。理由が集まれば、どこで間違いが起きやすいかが見えてきます。

棚卸の進め方は、棚卸のやり方と効率化にまとめています。

エクセル卒業・システム移行でよくある6つの失敗と対策

失敗1:マスタが汚いまま、システムに移行する

一番多い失敗です。重複した品目、単位があいまいな数字、場所の分からない在庫を、そのまま新しいシステムに流し込むと、システム上でも在庫が合いません。「システムを入れたのに数字が合わない」と現場の信頼を失い、結局エクセルに戻る、というケースもあります。

対策:前の章の5つを先に済ませ、エクセル上で1〜2か月、受払型の運用を回してから移行します。移行の作業そのものも、整った表からなら短く済みます。

失敗2:機能の多さでシステムを選ぶ

展示会やデモでは、多機能なシステムほど魅力的に見えます。しかし、卸の倉庫で使われない機能は、設定と教育の負担になるだけです。

対策:次の観点で、自社に必要なことを先に書き出してから比較します。

観点 確認したいこと
単位 ケース/バラ/ボールなど複数単位と入数の変更に対応しているか
ロケーション 1品目を複数の場所で持てるか。棚番の体系を自社に合わせられるか
連携 今の販売管理・受注の仕組みと、どう在庫をやりとりするか(自動か、CSVか)
ロット・期限 食品などで賞味期限・ロット管理が必要か
現場の端末 ハンディ端末やスマホで入出庫を入力できるか
データの出し入れ 品目マスタや受払をCSVで取り込み・書き出しできるか
拠点 物流子会社や複数倉庫の在庫をまとめて見られるか
費用 初期費用、月額、利用者数による課金、保守の範囲

特に「データの出し入れ」は軽視されがちです。CSVで書き出せれば、システムに移った後も、生成AIで分析を続けられます。

失敗3:補助金の締切に合わせて、準備不足のまま決める

在庫管理やWMSのソフトは、条件が合えば補助金の対象になる場合があります。ただ、締切に合わせて急いで決めると、失敗1・2の両方が起きやすくなります。補助金の対象や流れは卸売業で使えるデジタル化・AI導入補助金2026で整理しています。

対策:補助金は「準備ができた計画を後押しするもの」と考え、表の型を整える作業は補助金と関係なく先に始めます。

失敗4:マクロを作り込みすぎて、新しい属人化を生む

エクセルで頑張ろうとして、複雑なマクロを作り込むケースもあります。作った人がいるうちは便利ですが、いなくなると誰も直せない、という属人化を自分で作ることになります。

対策:マクロは「誰が読んでも分かるように、処理ごとに説明のコメントをつける」「1つのマクロに1つの仕事だけをさせる」を守ります。生成AIにマクロを書かせる場合も、コメントをつけるよう指示します。

失敗5:在庫を整えて満足し、発注の決め方が変わらない

在庫の数字が正しくなっても、発注が担当者の勘のままでは、欠品と過剰在庫は減りません。

対策:在庫が受払型で正しく取れるようになったら、次は発注点(この数を下回ったら発注する、という基準)を決めます。考え方は欠品と過剰在庫を同時に減らす発注点の決め方をご覧ください。

失敗6:入力の途中で、式や品目コードが静かに壊れる

受払型に変えても、入力する人が増えると、表は少しずつ壊れます。集計の式が入ったセルに数字を上書きする。品目コードの先頭の0が消える。区分に「出荷」「出庫」「出」が混ざる。数量に「2c」と書く。どれも、その場では誰も気づきません。月末に数字が合わず、原因を探して半日かかります。

対策:人の注意に頼らず、エクセルの機能で入力の幅を狭めます。

守りたいこと 使う機能 卸の在庫表での設定例
決まった言葉だけを入れる データの入力規則(リスト) 区分は「入庫/出庫/移動/棚卸調整」から選ぶ。ロケーションも棚番の一覧から選ぶ
数字の欄に文字を入れない データの入力規則(整数) ケース数・バラ数は0以上の整数だけ
式を上書きさせない セルのロック+シートの保護 入力する列だけロックを外し、数量(基準単位)や現在庫の式の列は保護する
置き場所を1つにする 保存場所のルール 在庫表は共有の1か所だけに置き、各自のPCにコピーして編集しない

Microsoftのサポートによると、データの入力規則ではリスト・整数・日付などに入力を限り、無効な値を入れたときに「停止」(直すまで先に進めない)・「注意」・「情報」のどれかのメッセージを出せます。現場の入力には「停止」を選ぶのが確実です(Microsoft サポート:セルにデータの入力規則を適用する)。

シートの保護は、入力させたいセルだけロックを外してから保護をかけると、その範囲だけ編集できる形にできます。ただしMicrosoftは、シートの保護は「セキュリティ機能として意図されたものではない」と明記しています(Microsoft サポート:ワークシートを保護する)。誤操作を防ぐための仕組みと考え、パスワードは管理者が持っておきます。

受払シートは「行を足すだけ、過去の行は直さない」と決めておくと、さらに崩れにくくなります。間違えた行は消さずに、打ち消しの行(同じ数量のマイナス)と正しい行を足します。履歴が残るので、後で何があったかを説明できます。

エクセルのまま、生成AIで在庫を分析し表の型を整える

在庫表が受払型に近づけば、システムを入れる前から、生成AIで分析ができます。使う生成AIは、ChatGPT、Claude、Gemini のどれでも構いません。いずれも、エクセルやCSVのファイルを添付して読ませることができます。

進め方は次のとおりです。

  1. 在庫表・受払表を、取引先名などを取り除いたうえでCSVかエクセルで書き出す
  2. 生成AIにファイルを添付し、下のプロンプトを貼る
  3. 出てきた結果を、担当者が現場の感覚と照らして確認する

プロンプト①:品目マスタの表記ゆれ・重複を見つける

卒業前にやる5つのことの「1. 品目マスタを1枚にまとめる」で使います。

あなたは卸売業の在庫管理に詳しい担当者です。
添付した品目一覧(列:品目コード、品名、JANコード、入数、単位)を確認し、
次の3つを表で出してください。

1. 同じ商品と思われる重複候補
   (品名の表記ゆれ、全角・半角の違い、略称、JANコードの一致などから判断)
   列:グループ番号、品目コード、品名、重複と考えた理由
2. 単位や入数があいまいな行
   (単位が空欄、入数が空欄や1、品名に入数が書かれているのに入数列と違う など)
3. 品名の表記ルールの提案
   (例:「メーカー略称 商品名 規格 入数」の順にそろえる、など)

# ルール
- 重複かどうか判断できないものは「要確認」と書き、勝手に統合しない。
- 元のデータを書き換えた表は作らず、候補の一覧だけを出す。

ポイントは**「勝手に統合しない」**という指示です。生成AIは、似ている品名を同じものとみなしてしまうことがあります。最終判断は、商品を知っている担当者がします。

プロンプト②:ABC分析と滞留在庫の洗い出し

受払表(出庫の履歴)と現在庫の表を添付して使います。ABC分析とは、出荷金額や数量の多い順に品目を並べ、上位から A(よく動く主力品)・B・C(あまり動かない品)に分ける方法です。

添付した2つのファイルを使って、在庫の分析をしてください。
- 受払表:日付、品目コード、区分(入庫/出庫)、数量(バラ)
- 品目マスタ:品目コード、品名、入数、単価、区分(定番/季節/取り寄せ)
- 現在庫表:品目コード、ロケーション、在庫数(バラ)

# やること
1. 直近12か月の出庫金額(数量×単価)でABC分析をする。
   累積構成比が70%までをA、90%までをB、残りをCとする。
2. 現在庫があるのに、直近【6】か月間に出庫が1回もない品目を「滞留在庫」として一覧にする。
   列:品目コード、品名、区分、在庫数(ケース換算も併記)、在庫金額、最終出庫日
3. 季節品は、前年同時期の出庫も見て「季節待ち」か「本当の滞留」かを分けて書く。
4. 結果の読み方を、倉庫の責任者向けに5行以内で説明する。

# ルール
- 計算に使った式と、除外したデータ(単価が空欄など)を最後に書く。
- 数字はファイルから計算したものだけを使い、推測で補わない。

滞留在庫の一覧は、返品・値引き販売・置き場所の見直しを相談する材料になります。季節品を「本当の滞留」と分けるのは、卸ならではの注意点です。前年の同じ時期と比べる視点を、必ずプロンプトに入れてください。

プロンプト③:受払型の在庫表を作る関数・マクロを書かせる

卒業前にやる5つのことの「2. 単位」と「4. 受払型」を、エクセルで形にします。

エクセルで、受払型の在庫表を作りたいです。次の条件で、
シートの構成、各列の関数、必要ならVBAマクロを書いてください。

# シート構成
- 品目マスタ:品目コード、品名、入数、基準単位
- 受払:日付、品目コード、ロケーション、区分(入庫/出庫/移動/棚卸調整)、
        ケース数、バラ数、数量(基準単位)、伝票番号、入力者、理由
- 現在庫:品目コード、品名、ロケーション、在庫数(バラ)、ケース換算

# 条件
- 受払の「数量(基準単位)」は、ケース数×入数+バラ数 で自動計算する。
  出庫はマイナスとして集計する。
- 現在庫は、受払から品目コード×ロケーションごとに集計する(SUMIFSを使う)。
- 品目コードが品目マスタに無いときは、入力した行を赤くする(条件付き書式)。
- マクロを使う場合は、処理ごとに日本語でコメントをつける。
- Microsoft 365のExcelで動く前提で、使う関数の説明を1行ずつつける。

出てきた関数やマクロは、必ずコピーしたファイルで試してから本番の表に入れてください。生成AIの書いた式は、列の位置がずれているなど、そのままでは動かないこともあります。

時間の比較(試算)

以下は、私たちが想定した前提での試算です。実際の時間は、品目数、データの汚れ具合、担当者の慣れによって変わります。

作業 これまで(手作業) 生成AIを使う場合
品目マスタの重複・表記ゆれの洗い出し 約16時間 約3時間(AIが候補を出し、人が判断)
ABC分析(月1回) 約3時間 約30分
滞留在庫の一覧づくり(月1回) 約2時間 約30分
受払型の在庫表の関数・マクロ作成 約8時間(または外注) 約2時間(AIが下書き、人が試験)

試算の前提:品目数3,000程度、受払の行数は年間数万行程度の卸の倉庫を想定。「これまで」は、エクセルに慣れた担当者1名が、フィルタと並べ替え、手作業の目視で行う場合。「生成AIを使う場合」は、プロンプトの実行と出力の確認・手直しにかかる時間を含めています。

ABC分析と滞留在庫の洗い出しを毎月行うとすると、試算上は月約5時間が約1時間になります。浮いた時間は、滞留在庫の処分の相談や、発注点の見直しに回せます。

入れてはいけない情報と、安全な使い方

  • 取引先名・個人名は入れない:受払表に得意先名や担当者名が入っている場合は、列を消すか「得意先A」のように置き換えてから渡します。品目コードと数量だけでも、分析はできます。
  • 法人向けプランを使い、学習に使われない設定を確認する:ChatGPT、Claude、Gemini などには法人向けのプランがあり、入力した内容をAIの学習に使わない規約・設定になっているものがあります。導入時に各社の規約と管理画面の設定を必ず確認してください。無料の個人アカウントで業務データを扱うのは避けましょう。
  • 最終確認は人がする:重複の判断、滞留在庫の処分、関数の正しさは、必ず担当者が確認します。AIの出力は「下書き」として扱ってください。

まとめ

エクセルの在庫管理が限界に見えるとき、本当の原因は、品目の呼び名・単位・置き場所の決まりがそろっていないことがほとんどです。同時編集ができない、ケースとバラが混ざる、履歴が残らない、作った人しか直せない、という4つの悩みは、システムを入れる理由にはなりますが、表の型を整えずに移っても解決しません。

卒業前にやることは5つです。品目マスタを1枚にする、在庫はバラで持ちケースは換算で見る、ロケーションを決める、受払型に変える、棚卸で実物と合わせて差異の理由を残す。ここまでできれば、エクセルのままでも生成AIでABC分析や滞留在庫の洗い出しができ、システムへの移行も短く、確実になります。

とはいえ、どこから手をつけるか、今の在庫表をどう直すか、システムに移るならいつ何を選ぶかは、倉庫ごとに答えが違います。私たちは卸の物流の現場を見てきた立場から、物流・卸売業向けのAI顧問として、その整理からお手伝いしています。御社の倉庫で何ができるか、60分の無料相談で整理します。まずは無料相談からお気軽にご相談ください。


出典・参考

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